●作家の代理人として出版界を活性化

(有)アップルシード・エージェンシー代表取締役

鬼塚 忠さん

 

(本文)

 

日本は出版社の権限が強すぎて、欧米とはまるで反対なんです

 

 元巨人の松井秀喜選手の米大リーグ挑戦で、米国球団との交渉を行う「代理人」の存在が注目されている。一方、出版界でも、日本人作家の代理人として出版社と書籍企画について交渉する、日本初の代理人会社が活躍中だ。

「昔から欧米の多くの作家には僕らのような代理人がついていて、作家の代わりに、国内外の出版社に作家の著作や出版企画を売っているんですよ」

 と、アップルシード・エージェンシーの鬼塚忠氏はいう。彼が同社を設立したのは一昨年10月。欧米作家の代理人として、作品の日本語翻訳権を日本の出版社に売るエージェンシー会社で、約4年間働いてからの起業だった。

「最初は世界の一流作家を自分が扱えることに感動してましたね。でもそのうちに出版の本当の面白さは、企画を立て、構成案を考えることだと気づいたんですよ。そうしたら、もう居ても立ってもいられなくなったんです」

 独立後、自ら作家と企画案をねり、出版社との交渉をしてみると、日本の出版界の保守的な体質を実感したという。

「例えば本の販売価格も刷り部数も、すべて出版社側に決定権がある。有名出版社の若手編集者が40代のベテラン作家を電話一本で呼びつける、なんてことが実際にありえる。作家の権限が出版社より強い欧米とは反対です」

 欧米では当たり前だが、日本では作家がひとつの作品を出版する際に、複数の出版社と交渉することは今もタブー。印税契約は販売価格の10%という設定も各社横並びだ。

「僕らは出版希望者が多いとオークションで出版先を決めます。そして印税も定価の1214%、本の売行きにかかわらず、例えば最初に2万部分の印税が作家に入るような契約が結べるようになりました。僕らは印税数%分の手数料を作家からいただきます」

 鬼塚氏の会社が、作家と出版社の関係をより公平なものに変えるキッカケとなった。操業1年で73タイトルの出版契約を結び、すでに30タイトルが出版され、海外翻訳も7タイトルで実現。著名作家だけでなく、無名の経営コンサルタントやバイオリン作りの名人などの発掘にも成功、10万部のベストセラーも生まれた。

「出版不況といわれながら、僕らは2,3万部売れる本も結構つくりましたからね。まっ、金儲けはできないかもしれないけど、面白い人物や企画にかかわれてワクワクできれば、人生十分オイシイとこ取りだと思ってます(笑)」

 大学在学中と卒業後に世界約40カ国を放浪した鬼塚氏。今後は書籍を通して世界の多様さや、よりワクワクする生き方を伝えていく覚悟だ。「王様は裸だ!」と叫んだ子供みたいに、いつの時代も新参者こそが、滑稽な慣習を笑い飛ばす知恵と勇気をもっている。

 

(プロフィール)

1965年、鹿児島県生まれ。鹿児島大学時代に2年間世界各地を放浪。大学卒業後も地元新聞社に旅行記を書き送りながら、さらに2年間で30カ国を回った。帰国後、アルバイトをへて英国人が社長を務める版権エージェンシー会社に入社。4年後に退社し、200110月に日本初の日本人作家の代理人会社アップルシード・エージェンシーを設立。目標は「平均2万〜3万部売れる出版企画のデパート」。

 

アントレ情報

 

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●提案内容

有能な作家やその卵たちに恵まれ、昨年は新宿歌舞伎町の闇を描いた李小牧著「歌舞伎町案内人」(角川書店)、世界有数のバイオリン職人陳昌絃著「海峡を渡るバイオリン」(河出書房新社)などを出版、好評でした。今年はカリスマ社長・野田豊著「プラン・ドゥ・シー(仮)」(TBSブリタニカ)などを予定。ご期待ください!

 

問合せ先

アップルシード・エージェンシー

рO3−5414−3655

E-mailinfo@appleseed.co.jp

 

(クレジット)

取材・文●荒川 龍  撮影●田口哲也