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アップルシード・エージェンシーは、日本で初めての「リテラリー・エージェンシー」・・・・・といっても、意味のわからない人がほとんどだろう。簡単に説明すると「作家の代理人」である。もちろん、代理人といっても、作家に代わって執筆するわけではない。作家と出版社の橋渡しをするのが主な役目。作家やライターと書籍向けの企画を練って出版社へ持ち込む。出版が決定した後も、原稿の校閲・校正まで行い、完成した状態で出版社へ納入、印税の数%分を作家から支払うというビジネスモデルだ。

 「書籍が出版されるまでの経緯として、欧米では、作家さんが『こういう本を執筆したいので、出版してくれる出版社はありませんか?』とエージェントに企画を持ち込みます。しかし、日本では、ほとんどの場合、出版社が作家さんに『こういう本を書きませんか?』と、執筆を依頼します。それも、有名な作家にばかり依頼するから、同じ作家が二冊も三冊も出版していたりと、日本の出版界は、どうしても新人が生まれにくい体質になっているのです。ですが、考えてもみてください。世界では、たとえば『ワイルドスワン』のユン・チアン、『ブリジット・ジョーンズの日記』のヘレン・フィールディング、『マディソン郡の橋』のロバート・ジェームズ・ウォラー、そして『ハリー・ポッター』のJ・K・ローリングなど、著名なベストセラー作品の多くは新人作家によるものですよね」(鬼塚氏)

 大手出版社の書籍編集者は、だいたいにおいて「年間に何冊出版する」というノルマを課せられており、「読んで欲しいから出版する」という衝動ではなく、「出版しなければならないから」という欧米とはまったく逆のアプローチで出版されるケースが多くなっている。その一方で、出版社は失敗を恐れ、初回発行部数を少なくし、宣伝も控える。妥協を重ねた結果「誰も知らないうちに出版され、そして書店から消えていく・・・・」という、負のスパイラルに陥っているのだ。鬼塚氏は言う。

 「海外ではオークションのように、いい企画があればどんどん出版権の価格がつり上がっていきます。大金をかけて買った出版権ならば、出版社も売るために努力をしなければならない。そうすることで、プロモーションに力が入るだろうし、売れるわけです」

 最近、鬼塚氏は、欧米流に三冊の出版権をオークションにかけた。その結果、ある日本の出版社二社が、一つを五〇〇万円で、もう一つを三一〇万円で落札。「面白い、売れる」と思ったからこそ、出版社もこれほどの大金を出したのであろうし、また最初からこれだけリスクを冒しているのだから、必死になって売ろうとするはずだ。

 パルマ(セリエA)の中田は、チームの柱へと成長し、マリナーズのイチローは米メジャーリーグを代表するリーディングバッターとなった。日本でのみ活躍していた選手が、代理人の手を借りて、より大きな舞台へと飛び出していく。将来、鬼塚氏が発見した新人作家が、彼らのように大活躍する日が訪れるのかもしれない。

 

プロフィール

鬼塚忠(おにづか ただし)

1965年、鹿児島県生まれ。鹿児島大学在学中に休学して、2年間イギリスで生活。卒業後もすぐには就職せずに、外国を放浪。これまでに訪れた国は約40カ国に上る。95年、「イングリッシュエージェンシー」という出版権を扱う会社に勤め、欧米の出版事情などを勉強。0110月にアップルシード・エージェンシーを設立し、現在まで約120冊の書籍を出版した。

http://www.appleseed.co.jp/